The Devil and Miss Prym

悪魔とプリン嬢 (角川文庫)

悪魔とプリン嬢 (角川文庫)

「ピエドラ川のほとりで私は泣いた」「ベロニカは死ぬことにした」に続く「そして七日目には・・・」シリーズの三部冊の小説がこれにて完結するのだそう。3つともそれぞれが扱うテーマは異なり、一週間のうちに人生が変わるという以外の共通点はなく、どれからでも読めるものになっている。今回のものは善と悪という二つの間に起きる永遠の分裂についてだ。

ダビンチが最後の晩餐を描く際に、善を表すキリストと悪を表すユダのモデルを選ぶにあたり、結果的にモデルが同一人物だった、ということからも言えるように、善と悪は誰にも双方が存在する。

すべては抑えるかどうかにかかっていた。そして、何を選ぶかに。
問題はそれだけだった。

それだけだと言えば実際にそれだけ。小さい頃、世の中のあれこれを何も知らないくせに大事な物がなにかははっきりとわかっているような、そういう感覚にこの小説のシンプルさは非常に似ていると思った。だから逆に言うと、悪に徹底的に支配されている人間にとっては訴えるものが弱いのではないかということも感じた。「悪」とはなにか、という時点でもんもんとしている類の人間には特に。

創世記のエヴァとアダムが神との約束を破って果物を口にした後に、神が「人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった」と半ば肯定的に言ったこの台詞の意図だけは、未だによくわからない。